第5章

 タイヤが滑走路に接地した。

 無意識に止めていた息を、ふうっと吐き出した。本当にあそこから離れたのだ。私は本当にやってのけた。

 胸のつかえが取れたような気がした。幸福感とは少し違う。ただ……軽くなったのだ。あまりにも長い間重荷を背負い続けていたせいで、それがない状態がどんなものだったか忘れてしまっていたかのように。

 乗客たちが頭上の荷物入れからバッグを取り出し始めた。私は自分のハンドバッグに触れた。電源を切ったままのスマートフォンが、その奥底に眠っている。電源を入れれば何が待ち受けているか、痛いほどわかっていた。不在着信、メッセージ、留守番電話。

 どうでもよかった。

 混雑...

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