第6章

健視点

 玲奈のことで心身ともに疲弊しきっていたにもかかわらず、健は今日も時間通りに出社した。彼は玲奈の空になったデスクを見つめた。彼女がM区にいると分かってはいても、心のどこかで、まだ彼女がドアを開けて入ってくるのではないかという妄想を抱き続けていた。

 しかし、十分が経過しても、玲奈は姿を見せなかった。

 玲奈は本当にいなくなってしまったのだ。彼の最後の希望は打ち砕かれた。

 彼はパソコンに向き直り、スケジュールのフォルダを開いた。

 電話が鳴った。今日中に渡宮との契約書にサインが必要だという。

 健はキャビネットを乱暴に引き開けた。書類が散乱しているが、ラベルも貼られておら...

ログインして続きを読む