第6章

 車が藤森家の正門をくぐり抜けると、家令が歩み寄り、声を潜めて告げた。

「旦那様が書斎でお待ちです」

「入れ」

 私がドアを押し開ける。父親は顔を上げることもなく、その声は抑えきれない怒りに微かに震えていた。

「埠頭での騒ぎは耳に入っている。幸雄の報告によれば、お前は夜の兄弟会に救助されたそうだな?」

「はい」

 私はドアのすぐ内側に立ち尽くしたまま答えた。

 ようやく父親が顔を上げた。その両目は私の記憶にあるものと寸分違わない——冷酷で、打算的で、温情の欠片すら見当たらない瞳だった。

「お前は藤森家と毒蛇グループの同盟をあわや台無しにするところだったと分かっているのか? 幸...

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