第4章

【広根視点】

 その報せを受けた瞬間、足の力が抜け、俺は濡れたアスファルトに激しく膝をついた。

 猛烈な雨がへし折れたガードレールを叩きつけ、その下には漆黒の海面が広がっている。誰かが「黒木社長!」と叫ぶ声がしたが、今の俺には届かない。紗織は車線変更ひとつにも神経を使うほど慎重な女だ。そんな彼女が、こんな台風の夜に崖から転落するなどあり得ないことだった。

 俺は支えようとするボディガードを乱暴に突き飛ばし、規制線の外に停めたブガッティへと駆け出した。明滅する赤色灯も、一族の長老たちからの着信も、マスコミのフラッシュも、すべて無視だ。ただ彼女を見つけ出す――それだけを考えていた。

 ド...

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