第4章

ガソリンとカビの臭いが、狭い車内に充満していた。ガムテープだけでかろうじて形を保っているような後部座席に押し込まれ、隣でハンドルを握る男の荒い息遣いが、私のパニックを煽る。

「ちくしょうが!」

男は悪態をつきながら、胃がせり上がるような急カーブを繰り返した。

「橘の犬どもが、もうすぐそこまで来てるはずだ。この街からずらかるぞ!」

私は恐怖に震えながら、腹部をかばうように抱きしめた。橘が用意した豪奢な鳥籠から、この狂人の拉致劇へ――時間と共に、私は奈落の底へと滑り落ちていくようだった。

『どうして私の人生は、いつだって私以外の誰かがカードを握るゲームになってしまったの?』

「...

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