第12章 嵐の後

煌々と明かりが灯る病院の救急科。夏川圭一は、消毒液の匂いが立ち込める診察台に横たわっていた。若い医師は、彼の身体に刻まれた無数の擦過傷と打撲痕を淡々と記録しながら、「幸い、命に別状はありません。数日安静にしていれば回復するでしょう」と告げた。その声は、圭一の耳には遠い世界の出来事のように響いていた。

やがて、静かに病室のドアが開き、田中警部補が入ってきた。その顔には、激務の疲労と安堵が入り混じっている。

「夏川、ご苦労だった」

圭一がゆっくりと身を起こすと、田中はベッドの傍らに腰を下ろした。

「スパイの拠点から、大量の証拠を差し押さえた。見る覚悟は、あるか?」

田中が差...

ログインして続きを読む