第6章 記憶の約束
「圭一さん、私、そろそろ失礼しますね」
美香が玄関でバッグを手に、くるりと振り返った。
「明日も仕事の準備がありますので。もし何かお手伝いできることがあれば、いつでもご連絡ください」
圭一は頷き、彼女を見送った。ドアが閉まった瞬間、家全体が恐ろしいほど静まり返る。一人玄関に立ち尽くし、見慣れたはずのすべてを見渡す。紬のピンク色のスリッパが、まだきちんと戸口に揃えられていた。まるで今にも彼女がドアを開けて、「ただいま!」と言って帰ってくるかのようだ。
「すまない……全部、俺のせいだ……」
もし俺があの忌々しい任務を引き受けなければ。もし紬に真実を打ち明けられていたら。もし...
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チャプター
1. 第1章 台風前夜
2. 第2章 消えた潮騒
3. 第3章 波の証言
4. 第4章 スパイ
5. 第5章 嵐が来る前

6. 第6章 記憶の約束

7. 第7章 潮汐表の秘密

8. 第8章 仮面の下の真実

9. 第9章 夜の嵐

10. 第10章 嵐が来る

11. 第11章 嵐の中の対決

12. 第12章 嵐の後


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