第8章 仮面の下の真実

早朝の陽光が薄雲を透かし、潮見島を淡く照らし出している。だが、夏川圭一の心は、夜明け前の海のように昏く、重かった。

今日は、妻・紬の追悼会だ。

圭一は黒のスーツに袖を通し、胸に白菊を挿した。鏡に映るのは、憔悴しきった蒼白い自分の顔。その瞳の奥には、三日前の夜の光景が、今もなお焼き付いていた。

――月光の下、密輸犯とL国語で言葉を交わす美香。そして、冷たく煌めいていた彼女の拳銃。

「……いつまで芝居を続けるつもりだ」

圭一は鏡の中の自分に、というよりは、これから会うであろう女に向けて、低く呟いた。

追悼会場に設えられた村長の家の和室には、すでに荘厳な空気が満ちていた。...

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