第12章 取引の後

彼女は黒髪の男の傍らにしゃがみ込み、珠を握った手を彼の胸元へ差し出した。

布地に触れるより先に、手首をがっちりと押さえ込まれる。

男が目を開いた。目立たない造作が、じわりじわりと偽りを脱いでいく。蒼白で、やけに華やかなその顔が露わになった瞬間、小沢かなの呼吸は見えない力で喉元から締め上げられた。

「エステル・グラント」

「閣下……やはり起きていらしたんですね」

彼女はそれ以上手を進めない。だが珠も捨てない。掌のひやりとした感触が、彼の古傷と自分のあいだに薄い隔たりを作っていた。

「セシリーは?」

「ジェシカが保健室へ連れて行きました。生きてます」

息を吸うのが、やっとだった。...

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