# 第20章 歯の中の来客

「もう大丈夫、エステル?」

小沢かなは涙をぬぐい、背筋を伸ばして座り直した。

ノアの手はまだ彼女を支えている。震えが収まるのを待ってから、静かに訊ねる。

「今なら話せる? 何があったんだ」

少し離れた場所で、サリーナが馬鞭を握りしめたまま立っていた。顔は強張り、唇の色さえ薄い。

小沢かなは一度だけ視線を向け、すぐに逸らす。

ここで姫の名を出すわけにはいかない。サリーナが追い詰められれば、昨夜の薬瓶だって、いつまで隠し通せるかわからない。

「……わからないの。たぶん……馬が急におかしくなって」

「エステル。僕たち、友達だと思ってた」

彼の袖口を掴む。声が、自然と落ちた。

「...

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