第44章 幻惑術

空気には、「緊張」としか呼びようのないものが漂っていた。

小沢かなの心臓が吊り上げられる。「どくん」「どくん」「どくん」――

ノアは、レインの異変に気づくのだろうか。

彼には、レインの心の声が聞こえるのだろうか。

それともレインは、どうやって平然と光明学院へ入り込んだのか。ルベンス主教たちに見つかるのを恐れていないのか――。

心臓を油の上に置かれたみたいに、じりじりと焼かれる。ほんの一瞬で、冷や汗が背中を濡らしていた。

――それでも。

「エステル、聞こえない」

その瞬間、ノアの声が天啓みたいに降ってきた。

「変だな……」

眉間に、名のない感情が絡みついたように、わずかに眉...

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