第57章

「めぇ???」

水色がかった瞳の奥に、うっすらと影が差す。そこに映っていたのは――湿った目をぱちぱちさせながら、こちらを見上げる、桃色のちいさな子羊だった。

「めぇ!!!」

……は?

嘘でしょ。わたし、羊になってる!?

小沢かなは手を上げようとして、崩れ落ちそうになった。視界に入ったのは、ぷにっとした桃色の子羊の蹄。

呆然としている間に、ふわりと身体が浮く。次の瞬間、あたたかな腕の中。相手の膝の上に、そっと座らされていた。

ノアは彼女を抱いたまま腰を下ろす。片手で本の頁をめくり、もう片方の手で、背中のやわらかな毛並みをすうっと撫でる。まるで、何度もそうしてきたみたいに。眉目は静...

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