第73章

「雪だ!」と誰かが叫んだ。

「わあ……綺麗。ほんと、綺麗すぎる!」

昼の惨状が嘘みたいに剥がれ落ち、夜空は巨大な濃紺のサファイアみたいに澄み切っていた。丸い月が天の端に掛かり、雪は空の奥からふわふわと舞い降りてくる。小沢かなは手を伸ばして受け止めた。掌の上でほどけて消えるのに、冷たさは不思議と感じない。

ピンクの兎も、間の抜けた三つ割れの口をぽかんと開けていた。

かなは思わず隣のノアを見た。こんなに賑やかなのに、銀髪の少年だけは相変わらずひんやりとして、雪の中にひとり取り残されたみたいに座っている。周囲の笑い声もざわめきも、彼には届かない――そんなふうに。

声をかけようとした、その...

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