第80章

闇の生き物が、どんどん増えていく。ほとんど回廊そのものを塞ぎきってしまい、見渡すかぎり黒くてしわだらけの「でかいネズミ」ばかりだった。

背の高い痩せた少年が剣を握り、醜悪な邪なるものどもと死闘を繰り広げる。闇の中で鋭い剣閃がきらめき、速すぎて小沢かなには残像しか追えない。

彼の喉元が、目の前にある――

そこだけ、肌が脆くて、やけに鮮やかで。

――まだ。まだその時じゃない。

もう少し。もう少しだけ。

今ここで使えば、気づかれる。

小沢かなは親指瓶を胸元へ押し戻した。

「逃げるって……どこへ?」

そう問いかける。

「この裂け目は地の底へ繋がってる。下へ行っても出口はない。来た...

ログインして続きを読む