第98章

ベルナ湖のほとりを通りかかったとき、見知らぬ――出っ歯の目立つ少年が勢いよく駆け寄ってきた。こちらを見つけるなり、ぱっと顔を輝かせる。

「ボルトさん! ボルトさん! ルベンス様がお呼びです! その……その、聖殿から人が来たって! ボルトさんのこと、助かるかもしれないって!」

また……ボルトさん、か。

相手の目の奥に、ときおり走る嫌悪さえ見えなければ。小沢かなは、危うくこの芝居がかった喜色に感心してしまうところだった。

幕が上がった。

なら、こちらもそれらしく合わせてやるまでだ。

「本当?」少女は息を弾ませるように言った。「嘘じゃないよね? ルベンス様が、本当にそうおっしゃったの?...

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