第106章 まだ私にそんなこと言えるの?

水島三久と市川悠介は、ちょうど視線が空中でぶつかった。

市川悠介がこちらに気づき、今にも声をかけてきそうになった瞬間――三久は「見えてませんけど?」と言わんばかりに視線をすっと外し、迷いなく踵を返す。

スマホを耳に当てたまま、彼女は校舎の側面へ向かって小走りになった。

電話の向こうの小川文美も、三久の様子がおかしいことにすぐ気づいたらしい。

「三久……まさか、今ぶつかった?」

「まあ、そんな感じ。でももう逃げた」

三久は校舎の角に身を潜め、窓越しに正面ホールのほうをこっそり覗く。

――よかった。市川悠介は数歩追いかけてきただけで止まった。

あれ以上来られてたら、さすがに気まず...

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