第177章 いい子だから、騒がないで……

 彼の大きな手が、するりと彼女の髪を梳くように滑り、うなじをそっと押さえた。次の瞬間、唇に落ちてきたのは――天野真司のキス。

 水島三久は、ふっと動きを止めた。

 真司がキスしてきたこと自体が意外だったわけじゃない。主導権も優位も、ずっと彼のほうにある。なのに、その口づけは……言葉にしがたいほど慎重で、どこか媚びるようで、ひどく優しかった。

 天野澄人が「真司は君の身が心配でキツくなっただけだ」と言っていた。三久は半信半疑だった。

 でも、今は信じられる。

 この人は、私のことが好きだ。

 少なくとも、天野家の誰かを大切にするのと同じくらい、私を気にかけている。

 そんな男に、...

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