第225章 ただしっかり抱きしめていたいだけだ

「え――」

池田守が水島三久を呼び止めようとしたときには、もう彼女の姿は見えなくなっていた。

本当は、先に電話しておくか聞くつもりだったのだ。

さっき天野真司と「冷たい飲み物を届けたら連絡する」と約束したばかり。とはいえ、若様に先に一言入れておいたほうがいい。でないと、若奥様がまた無駄足になる。

「……プルルル」

すぐに繋がった。

受話口の向こうから、ひんやりと澄んだ声。

「用は済んだのか?」

思ったより早い、とでも言いたげな疑いが混じっている。

池田守は軽く咳払いした。

「冷たい飲み物、若奥様はたぶん飲めていません」

「寮に戻ったのか?」

それとも、誰かに呼ばれて行...

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