第247章 三久、怖がらないで

水島三久は、どうやら彼の熱にあてられたらしい。ゆっくりと俯き、彼のメガネを外すと、額へ、瞼へ、鼻筋へ――そっと口づけていく。

一度、また一度。軽く、やわらかく。じわじわと心を削るみたいに、たまらなく甘い。

「三久……」

掠れた声。抑えきれない欲が、語尾から滲み出る。

天野真司は脚をわずかに開いたまま座っていて、身体の変化に合わせるように、輪郭まで微かに変わっていく気がした。

鼻先いっぱいに、彼女の匂いが満ちる。いい匂いだ。

その香りが、いつも脳裏にまとわりつく記憶の匂いと重なって――まるで、干上がった心の奥へ豪雨が沁み込むみたいに。雨のあと、土の下で何かが根を張り、芽を出す。そん...

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