第30章 今こそ絶好のチャンス

水島三久は、天野真司が他人と相合い傘をするのが嫌いなのだと思った。傘を替えようとした、その瞬間――背中の襟を、大きな手にぐいっとつままれる。

「……?」

首をひねって振り返ると、天野真司がそこにいた。

「天野さん、まだ何か……?」

「俺……」

天野真司のほうが、むしろ固まっていた。

なぜ自分が反射みたいに彼女を掴んだのか、本人にも分からない。

けれど、掴んでしまった以上、引っ込めるのも妙だ。

彼は軽く咳払いをし、平然とした顔で言った。

「池田守が風邪だ。あいつと同じ傘に入って、君までうつったら面倒だろ」

「え? 池田さんが? でも……すごく元気そうに見えますけど……」

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