第53章 彼女を傷つけられない

終わった……。

さっきまでの作戦は完璧だった。けれど水島三久が目の前に現れた瞬間、あのコーヒーだけは――どうしても、ぶちまける気になれなかった。

義姉さんが、あまりにも綺麗すぎたからだ。

もしコーヒーを浴びせて、彼女が泣いてしまったら……そう想像しただけで、二人の胸の奥がずしりと重くなる。

たかがパチモンのドレスだろ?

二人は息を合わせたみたいに視線を交わし、同時に小さくうなずいた。

天野澄人はコーヒーをひと口飲み、珍しく冗談めかして言った。

「そうそう。中身はコーヒー。俺たち、どっちかっていうとインスタント派なんだよね。だって……インスタントのほうが甘いし」

――ちょうど、...

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