第8章 彼女を残しておこう

天野真司の視線が、刻一刻と危険な色を帯びていくのを受けながら、池田守は腹を括って口を開いた。

「若様、わ、私は……」

「もういい。彼女は泊まらせろ」

「えっ……」

池田守が疑問を口にするより先に、天野真司が冷ややかに一瞥をくれた。

「明日、おじい様が目を覚ましたら怪しまれる」

「さすが若様、周到でいらっしゃいます。では、若奥様をお部屋まで――」

池田守は運転席のドアを閉め、車体の前を回り込む。後部座席のドアノブに指が触れた、その瞬間。

天野真司の、淡々としているのに妙に刺さる声が飛んできた。

「部屋を用意しろ」

「え……」

池田守は伸ばした手を、そっと引っ込めた。ためら...

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