第80章 義姉さんはさすが達人だ

誰が見ても、藤井愛奈がまた一悶着起こす気なのは明らかだった。

普段は感情を表に出さない天野真司でさえ、顔色が冴えない。

――他人の奥さんの目の前で、その旦那に取り分ける?

水島三久がいなければ、「仲がいいだけ」で済ませられたかもしれない。

だが今は、当の水島三久が同席している。

藤井愛奈も卓上の空気が妙だと気づいたのか、わざとらしく遅れて思い出したように言った。

「やだ、私ったら。三久のこと、すっかり忘れてた」

そう言いながら、今度はサーモンを一切れつまみ、水島三久の皿へ運ぼうとする。

しかし途中で、水島三久の箸がすっと伸びてきて、ぴたりと受け止めた。

藤井愛奈の箸がふっと...

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