第94章 悪気なんてないよね?

「ほら、もう悪戯はおしまい。ダンス、覚えようか」

声はやけに優しい。まるで、腕の中で好き勝手に爪を立てる子猫を宥めるみたいに。

その甘い調子が、水島三久には少しだけ居心地が悪かった。肩をすくめると、彼らに続いてリハーサル室へ向かう。

幸い、振り付けは簡単だった。少し練習しただけで、四人ともだいたい形になってくる。

市川悠介は成果に満足したらしく、休憩中の四人を見回して言った。

「二、三日したら録音スタジオに連れて行く。そこでこの曲を録ってもらう。当日はその音源を流すから……」

小川文美が不安そうに眉を寄せる。

「でも……それって、口パクってことですか?」

隣の近藤加奈子が、わ...

ログインして続きを読む