第5章
アレスの導きであのザトウクジラを癒して以来、私は聖廷の医護翼に配されていた。毎日、かつて私を惨めにした銀青の光を使い、暗流に裂かれたマッコウクジラや、密猟の網で鱗を切り裂かれたイルカたちの傷を塞いでいく。
ようやく自分の価値を見つけた。アキローナで「役立たずの平凡な長女」と呼ばれていた私はもういない。深淵聖廷が敬う「治癒共鳴者」として、ここにいる。
そしてアレス――伝説では暴虐で血に飢えた海神。けれど戦装束を脱いでしまえば、彼は決まって医護翼の黒曜石の柱にもたれ、金と青が交じる深い瞳で、静かに、優しく、それでいてどこまでも真剣に私を見守っていた。
だが、過去の影はそう簡単に消え...
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