第7章

 深淵聖廷へ戻ったその夜、海はこれまでになくぬくもりを帯びているように感じられた。

 アキローナでの騒動は、遠くて滑稽な悪夢みたいだった。私は正式に「セレン」の姓を捨てた――そう思った瞬間、ずっと影のようにまとわりついていた息苦しさが、跡形もなく霧散した。

 アレスは私の手を引いた。医護翼へは戻らない。まっすぐ、聖廷の最深部へ――「潮汐之心」へ。北大西洋でもっとも純粋な魔力が満ちる、触れてはならない禁域。

 そこに広がる海は、信じられないほどの液体の星空だった。淡い燐光が、ふわり、ふわりと漂う。

 アレスが足を止め、振り返って私を見た。金と蒼が交じり合う双眸の奥で、私の知らない熱い暗...

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