第6章

はっと記憶から引き戻されると、私はまだ桜原市の桜原芸術ギャラリーの仕事机に座っていた。スマホの画面には悠真と美和の婚約写真が映ったままで、それがこの厳しい現実を容赦なく突きつけてくる。

赤い監視ランプを見つめていた震える女子大学生だったあの頃から、二十六歳になった今の私まで、四年が経っていた。

でも、今回は違った。

もう一度、その婚約写真を見る。不思議なことに、胸に込み上げてきたのは失恋の痛みではなく……安堵、だった。

「そうだったんだ」と、驚くほど穏やかな声で独りごちた。

美和は白いシャネル風のスーツを身にまとい、彼の腕に自分の腕を絡ませ、優雅で完璧な笑みを浮かべていた。あの銀灰色...

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