第17章

残念ながら……野口雅子が狙った相手は素早く身をかわし、赤ワインは一滴も服につかなかった。

堀川純平はワインの染みひとつない背広を軽く整えると、再び口を開いた時には声が極限まで冷たくなっていた。「死にたいのか!」

「純平!雅子ちゃんは故意じゃないんだ!」大塚周作が慌てて仲裁に入った。

ところが野口雅子は冷たく鼻を鳴らし、挑発的な目で堀川純平を見つめた。「いいえ、大塚さん、私は故意よ!」プライベートの場では大塚周作を校長と呼ぶのは避けていた。

二人の視線が交錯し、互いの目に宿る怒りの炎が相手を焼き尽くさんばかりだった。「誰か来い!」

堀川純平の声が響いてから数秒も経...

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