第45章

半開きになっているドアの前で、ノックしようとした男は静かに手を引っ込めた。

原田明はバーに着いたばかり、野口雅子からの電話と分かると、静かな場所を探して応対した。

「仕事か?本当に行くつもりなのか?」

「うん、最近金欠でさ、これ以上働かないと草を食べて暮らすしかないよ」

あと二ヶ月くらいは何とかなると思っていたのに、堀川純平がまたみんなにアイスをおごれと言い出して、二日分の予算が吹っ飛んでしまった。

「お前が金欠?」原田明は驚いて、詳しく聞こうとしたが、一緒にいた兄貴たちに呼ばれ、仕方なく言った。

「わかった、明日返事するよ」

「うん、それじゃあ……もしくは……...

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