第139章 何もなかったことにする

菅野美雪は言葉を失い、目を見開いた。

母のその反応を見て、菅野雅子の胸の奥に、ほんの少しだけ安堵が灯る。彼女は途切れ途切れになりながらも、起きたことをすべて吐き出した。

「お母さん……あの子、私が床に倒れてても、ただ見てるだけだった。救急車すら呼んでくれなかった……」

雅子は震えながら泣いた。胸の痛みで息が詰まり、まともに呼吸もできない。

「須藤彩夏を殺そうとしただけじゃない。あの子、私の命まで取りにきたのよ!」

これだけ言えば、たとえ妹を可愛がっている母でも、さすがに自分のために怒ってくれるはずだ。そう思っていた。

だが――。

美雪は話を聞き終えても、顔に浮かんだのは怒りでは...

ログインして続きを読む