第37章 深い恐怖

神谷彩夏は深く息を吸い込み、ゆっくりと足を踏み入れた。

神谷家の別荘は、息をのむほど精緻で豪奢だった。門扉にさえ白い大理石が惜しげもなく使われ、くぐった先には五十平米はあろうかという噴水が据えられている。

それだけの噴水があっても、庭は窮屈に見えない。

多くの人にとっては夢にまで見た楽園なのだろう。だが神谷彩夏にとって、ここは地獄へ通じる最後の検問所だった。

玉のように滑らかな石段を踏むたび、心臓が早鐘を打つ。奥へ進むほど、鼓動はさらに速くなる。

もう一度、息を吸う。

今日に至るまで、彼に弄ばれ、壊され、死ぬほどの目に遭わされてきた。神谷彩夏は気づいてしまっていた。神谷承吾への憎...

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