第45章 墜落

菅野詩音は神谷承吾のもとに、もう何日も居座っていた。

まるで人が変わったみたいに、一日の大半を神谷拓也の相手に費やす。

やけに辛抱強く、子どもの目線までしゃがみ込み、声まで甘くして――。

「拓也、ママが何を持ってきたと思う? ほら、ミニカー。走るんだよ」

けれど拓也は、何を言われても反応しない。俯いたまま積み木を握り、指先で行ったり来たりさせているだけ。

菅野詩音はそれでも柔らかく笑い、本当の母親みたいに愛情深い顔で、別の玩具を差し出した。

「じゃあ、これは? 歌が流れるの」

拓也はやはり、見向きもしない。

少し離れたソファでその光景を眺めながら、神谷彩夏は言葉にできない感情...

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