第83章 暗示

菅野雅子は、体調が戻るとすぐに講義へ顔を出した。

教室に入って真っ先に目についたのは、いちばん後ろの席に座る須藤彩夏だった。

教室の中はざわざわと騒がしい。けれど、彼女だけはその喧騒から切り離されているように見える。

静かに椅子に腰かけ、うつむいたままスマホを見つめ、片手では脇のノートに何かを書きつけていた。いや、描いているのかもしれない。

その姿を見つめながら、菅野雅子は胸の奥に言いようのない感情を覚えた。

何と呼べばいいのか、自分でも分からない。

ただ、目の前の須藤彩夏が――妙に癇に障った。

見たくない。どこにいたって。

「雅子、もう授業に戻ってきたの? 体、大丈夫?」

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