第28章 真実か挑戦か

二人は同時に、ふっと足を止めた。予想外の距離の近さに、江口初姫は反射的に息を呑む。

周防宴久という存在が、いままでになく強く迫ってくる。――気づけば、たった数日で、彼の匂いをほとんど覚えてしまっていた。

こうして肩を並べて歩く散歩が、妙にしっくりくることまで。

いまさらになって、胸の奥が遅れてざわめく。目の前の男は、かつての自分にとって、手を伸ばしても届かない高嶺の花みたいな人だったはずなのに――。

そこへ、記憶の底に染みついた酒の匂いが重なった。

脳裏に、封をしていたはずの光景が浮かび上がる。

車内。向かい合う二人。鼻先が触れそうな距離。彼女が周防宴久の口を、咄嗟に手で塞いで―...

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