第30章 江口初姫の心変わり

最後まで江口初姫は周防宴久に折れてやれなかった。佐川蘭が車で迎えに来て、ようやく周防宴久は乗り込む。

江口初姫は周防宴久に小さく会釈し、互いに淡々と別れた。

車が動き出してから、佐川蘭が妙に言いにくそうな顔で口を開く。

「江口社長……周防さんと、喧嘩でもしました?」

「は?」

江口初姫は意味が分からず眉をひそめた。自分と周防宴久が揉める理由なんて、どこにある。

「なんでそう思うの?」

佐川蘭はバックミラー越しに、まだ外を見送ってから丁寧にドアを閉めた周防宴久をちらりと確認した。

どこか――変だ。そう感じるのに、具体的に何が、と問われると言葉にできない。

だが江口初姫は至って...

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