第36章 川瀬千茉を去らせる

江口初姫は、自分の条件をはっきりとは口にしなかった。

少し考えてみたものの、周防宴久に「これを手伝ってほしい」と頼める用事が、今すぐ思い当たらない。

それに――「約束」を一つ預かる、その価値があまりにも魅力的だった。

だから彼の底を探るように、遠回しに告げる。

「まだ思いついていません。……先に借りておいても、いいですか」

周防宴久は、初姫の小さな打算を見抜いたようだった。

けれど、暴くでもなく、ただくすりと笑って頷く。

「いいよ。じゃあ、江口さんの次の美夢が叶うのを待ってる」

それで、初姫は確かに「約束」を手に入れた。

その日一日、気分は驚くほど軽かった。

夜。退勤して...

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