第38章 無様

江口初姫は目を見開いた。「不倫……?」

神谷柊には彼氏がいる。付き合ってもう何年も経つし、仲も良い——そう聞いていた。

初姫自身は相手の男と直接会ったことこそないが、柊の口から出るのはいつだって「いい人だよ」「頼れるよ」という話ばかりだった。大切にしているのが、見ていれば分かった。

けれど今、柊がその男のことを口にしても、もう以前の甘さは一片もない。

あるのは、握りしめた拳が震えるほどの憎悪だけだ。

「そうよ! あのクズ、浮気しやがったの!」

ほとんど噛みつくように吐き捨てる。眼の縁は真っ赤で、涙が溜まっているのに、怒りで乾いた声だった。

「私の金で生きてるくせに、私に隠れて浮...

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