第55章 彼女は誰にも媚びない

江口当主の顔色がみるみる悪くなっていくのを見て、増田梅は胸の内でほくそ笑んだ。

彼女はすぐさま江口姫希に目配せをする。

この母娘はここしばらく、江口初姫から散々な扱いを受けてきた。だからこそ遠慮などせず、火に油を注ぐつもりで煽り立てる。

江口姫希は目をくるりと回し、ぽろぽろと涙を落とし始めた。

「お姉ちゃんが私のカード止めてから、新しい服なんて一着も買えてないの。こないだ宴会に出たときも笑われた……『江口家は江口初姫ひとりに養ってもらってる』って」

彼女は素早く江口当主の顔色を盗み見て、さらに哀れっぽく声を落とす。

「私、反論したの。お父さんが頑張って家を支えてるって。でも向こう...

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