第58章 下で彼女を待ち伏せる

周防宴久は、江口初姫の瞳に滲んだ気まずさも拒絶も、まるで見えていないかのようだった。

散らかった床一面の惨状を何食わぬ顔で見回し、眉を上げて口元をゆるめる。

「江口社長、やるね。君が手を出すところを見るの、これで二度目だ」

江口初姫は内心ひやりと息を呑み、そこに混じる揶揄を聞き取った。

こほん、と咳払いをひとつ。平然を装って言う。

「ちょっとした誤解です。うっかりぶつかっただけで……周防社長に笑われちゃいますね」

周防宴久は肯定も否定もせず、無言で江口初姫の足元へ視線を落とす。ハイヒール。

そして、どこか考え込むように、もう一度だけ眉を持ち上げた。

江口初姫は黙って半歩退き、...

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