第59章 江口初姫をしつける

江口初姫は足を止め、振り返って険しい顔で音無真を睨みつけた。

「……どういう意味?」

夜も更け、階下の街灯がふっと暗くなって、初姫の表情はいっそう冷たく映る。音無真とのあいだには、触れられない距離が横たわったようだった。

音無真の血が、理由もなくひやりとする。

初姫の瞳の奥にある警戒――それは自分が周防宴久の名を出したからだ。そう理解した瞬間、胸の奥で何かが軋んだ。

音無真は鼻で笑い、一歩、詰め寄る。

「何だよ。やましいことをしてるくせに、名前を出すなって?」

初姫は冷えた声で言い返す。

「まともに話せないなら帰って。ここは、あなたが噂を捏造する場所じゃない」

罵られても、...

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