第63章 酒を顔にぶちまける

江口初姫はそう言いながら、思わず二歩、あとずさった。

この宴の空気には、最初から強い警戒心を抱いていた。もうここに留まるつもりはない。

「坂東社長のお邪魔はいたしません。失礼します――」

踵を返す。だが、行かせてもらえなかった。

坂東ケビンが江口初姫の手首をつかみ、その足を止める。口調だけは気遣わしげだ。

「具合が悪いなら、どうしてもっと早く言ってくれなかったんです? そんな状態で一人で帰すなんて、こちらも安心できない。中で少し休んだほうがいい」

有無を言わせぬ力が、その手にわずかにこもる。坂東ケビンは一歩踏み出し、江口初姫を半ば引き込むようにして部屋の中へ連れていった。

背後...

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