第74章 落水

宴席の和やかさが、音を立てて崩れた。

プールの水面には、江口初姫と川瀬千茉がもがく水音が反響している。

必死に助けを求める川瀬千茉とは違い、江口初姫は早々に動きを止めた。

全身が冷えきって硬直し、目だけを見開いたまま悪夢に囚われたように、恐怖で満ちた視線を水中へ沈めていく。溺れかけた衝撃で、身体が言うことをきかない。

視界の奥に、川瀬千茉の歪んだ笑みが、また浮かんだ。

ただし今度は輪郭が滲み、なのに骨の髄まで刻みつけるように鮮烈だった。あの船の上。海面の上に、川瀬千茉と一緒に吊るされていた光景。

誘拐犯の脅しと、音無真の選択。

川瀬千茉が音無真の胸へ飛び込み、自分だけが冷たい海...

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