第104章

発注側の連中は見るからに上機嫌になり、待ってましたとばかりに原崎野矢へ挨拶し、持ち上げ始めた。

原崎野矢は取り合わない。ただ金原亜沙美にだけ問いかける。

「ほかに用は?」

「い、いえ……ありません」

金原亜沙美は嬉しさを隠しきれない声でそう言うと、そのまま通話を切った。

会場は一気に沸いた。発注側も満足げに、心を動かされたような笑みを浮かべている。

私は静かに座ったまま、彼らの歓声を眺めた。テーブルの下で、手だけがわずかに握り締められる。

原崎野矢は、もともとこういう男だ。

昔は私のことを好きすぎるくらい好きで、優しすぎるくらい優しかったから――私は危うく忘れかけていた。最初...

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