第112章

原崎野矢視点

拳を握り締め、目の前の酔っぱらいを睨み据える。今すぐ殴り殺してやりたい――そんな衝動が、喉の奥までせり上がってきた。

心が追いつくより先に、体が動いた。広瀬妃菜が絡まれているのが見えた瞬間、頭に浮かんだのはただ一つ。

あんな脂ぎった手で、彼女に触れる資格があると思ってるのか。

「原崎野矢……」

酔漢のわめき声の中で、広瀬妃菜が振り向く。驚いたように、こちらを見た。

男は手を押さえ、酔いが半分抜けた顔で口をもつれさせる。

「お、お前誰だよ? 俺が女口説いて何が悪いんだよ!」

俺は視線を上げ、警告だけを詰め込んだ目で射抜いた。

酔漢は一瞬で黙り込み、情けないほどあ...

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