第14章

原崎野矢視点

広瀬妃菜はメニューへ視線を落としたまま、何も言わない。長いまつ毛が伏せられて、瞳の奥の感情を隠している。

さっきのあれは――どう考えても嘘だ。

俺は覚えている。広瀬妃菜は昔、しょうがの効いたお菓子をよく食べていた。

最初から最後まで、しょうがを避けていたのは俺のほうだ。

空気がじわりと変に甘く、そして刺々しくなる。

しばらくしてから、俺は淡々とウェイターに言い直した。

「彼女の言う通りで。しょうが抜きで」

ウェイターが一礼して下がる。

広瀬妃菜がこっそり息を吐いたのが見えた。それでも顔は上げられないらしい。

――何を企んでる。

俺は表情に出さず、赤ワインを...

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