第20章

広瀬正国がもう一度こちらを見て、唇をわずかに動かした。

慰めの言葉でも掛けるつもりなのだろう。私はすぐに察して、聞き分けよくうなずく。

「今回のチャンスは有香に譲ります。私は別に異論はありません。顔がこんな状態じゃ、確かに壇上には立てませんし」

広瀬正国はため息をつき、うなずいた。

「次から気をつけろ。発表会が終わったら、病院でアレルゲンの検査を受けてこい」

「はい」

素直に答え、彼の背中を見送る。

林原武美は勝ち戦でも終えたみたいに肩のショールを整え、得意げに私を一瞥してから、同じように去っていった。

あの母娘、もう隠す気すらない。

私を家からも会社からも追い出したくて仕...

ログインして続きを読む