第69章

広瀬妃菜視点

午後いっぱい、誰にも邪魔されなかった。

受付には伝えてある。田村成川、もしくはアポのない人間が来たら、その場で追い返せ。いちいち私に報告する必要もない、と。

夕方。仕事の電話を一本切った直後、今度は私用の携帯が震えた。

広瀬有香からだ。

眉間に皺を寄せたまま通話ボタンを押す。

「広瀬妃菜! あんた、田村成川に何言ったのよ!」

繋がった瞬間、金切り声が耳を刺した。

「さっきうちに乗り込んできて大喧嘩よ! あんた、成川の前で変なこと吹き込んだんでしょ!」

私は窓の外の薄暮に目をやり、いったん仕事の思考を切り替える。

「何を言ったって? 事実を伝えただけ。どうした...

ログインして続きを読む