第73章

広瀬妃菜視点

原崎野矢に抱き寄せられたまま、病院の廊下でキスをされる。頬が熱くて、今にも燃えそうだった。

とくに、田村成川の視線に気づいた瞬間。恥ずかしさより先に、胸の奥から得体の知れない痛快さがせり上がってきた。

演じるのが好きなんでしょう?

でも――原崎野矢と比べたら、あんたの小細工なんて滑稽なだけ。

私はわざと病室のほうへ顎をしゃくってみせ、そのまま原崎野矢に肩を抱かれたまま踵を返す。

「妃菜、行くな! 頭が痛い!」

田村成川が引き留めようと叫ぶ。けれど私は振り返りもしなかった。

車に乗り込んでようやく、顔の熱が少しずつ引いていく。

柔らかな本革シートに身を沈めたとこ...

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