第74章

広瀬正国はふと昔を思い出したのか、静かに息を吐いた。

「北矢は子どもの頃に大きな病気をしてね。足に少し後遺症が残った。歩くと、どうしても引きずる。……当時、会社の古株連中が頭の固い連中でさ。身体に障害のある人間を役員に入れたら、会社のイメージが損なわれるって、頑として譲らなかった。俺にも、どうにもできなかったんだ」

首を横に振り、苦笑する。

「だから北矢は、俺のそばで執事としてやっていくしかなかった。……あいつの器を思うと、確かに勿体なかったよ」

足を引きずる――。

広瀬北矢は能力があるのに、身体のことを理由に会社へ入れない。日々、家業が目の前にあるのに触れられず、それでも誰かに仕...

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