第80章

家の前まで車を飛ばして戻ったが、広瀬有香の車は見当たらなかった。

――まだ着いてないってことか。

玄関が開く音を聞きつけて、林原武美が寝室から慌てて出てくる。

けれど、立っていたのが私ひとりだと分かると、口元の笑みがすっと引っ込んだ。視線が私の背後を探る。

「あなたの妹は? 有香、どうしたの?」

私は広瀬正国のほうを見て、さらりと説明する。

「妹は、あの原崎野矢さんのお友だちと意気投合しちゃって。気が合ったみたいで、そのまま映画を観に行ったんだ。私も邪魔して間を持たせるのは悪いから、先に帰ってきたの」

「そうなのね」

林原武美はそれを聞いた瞬間、ぱっと顔を輝かせた。

「で、...

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